ここ数年で、女性の筋トレ愛好者もかなり増えてきました。
全身のシェイプアップはもちろん、きれいな形のお尻やお腹まわりの贅肉をすっきりさせること等を目的に、
筋トレに取り組まれている方も大勢います。
しかし、自分の体型をどのように判断するかは、個人の主観的な価値観によるところが大きく、
実際の見た目の良さとは必ずしも一致していないことがあります。
例えばよくあるのが、男性が理想とする女性の体型よりも、女性はさらに細い体型を求める傾向があります。
女性の痩身志向自体は全く問題ありません。
しかし、気を付けなければならないのは、
理想を追求するあまりに、行き過ぎたトレーニングやダイエットを行ってしまうと、
貧血や月経障害、骨形成の低下等を引き起こしてしまう可能性があることです。
特に女性の場合は、体脂肪率が低くなればなるほど月経異常率も高くなり、
体脂肪率が10%未満になるとほとんどの方が月経異常になるという報告があります。
女性の身体における脂肪は、第二次性徴期を迎えるあたりから増加しはじめ、
女性らしい丸みを帯びた体型を形づくっているだけでなく、正常な月経周期にも大きく関係しています。
女性アスリートの月経異常が身体に及ぼす悪影響については、度々話題に挙がることもあります。
ステロイドホルモンの一つであるアンドロゲン(男性ホルモン)は、
脂肪によってエストロゲン(女性ホルモン)に転換されることから、
体脂肪量が極端に少ない女性は、この転換率が低くなってしまい、
結果的に高アンドロゲン状態をきたすことによって、月経異常を引き起こすと考えられています。
なお、エストロゲンは骨密度にも影響を及ぼすことが分かっており、
低エストロゲン状態が続くと、骨が脆くなり、若くして骨粗しょう症と同じような状態を引き起こしてしまい、
トレーニングによる疲労骨折を誘発することになります。
このようなことから、女性の体脂肪は性ホルモンの分泌等にも大きく関わっているので、
美容目的のみで単純に減らせば良いという考えで運動に取り組んでいると、
様々な面で健康を損なうことにもなりかねないので、注意が必要です。
なお、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの作用として、
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の低下、骨量の維持、
血糖のコントロール(インスリンの作用効果に影響を与える)等があります。
閉経後には前述の因子を調節している女性ホルモンが劇的に少なくなるので、
体重の増加や2型糖尿病、動脈硬化、あるいは骨粗しょう症等、身体にとって不利益な疾患にかかりやすくなります。
しかし、大変興味深いことは思春期から閉経を迎えるまでの約30年間で分泌される女性ホルモンの量は
ティースプーン1杯分と言われていることです。
たったこれだけの量で生涯の月経周期をはじめ、
その他骨量の維持、血糖、血圧等を調節していることを考えると、驚かずにはいられません。
閉経後の女性は閉経前に比べて身体の状況が変わっていることを認識し、
今の自分の体調等を考慮した上で、必要な運動や食事を取り入れると良いでしょう。